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PIPERS405号掲載

セルマー・パリ社の2つの新アルトを試奏する!
記事協賛:野中貿易株式会社


ジュビリーで飛躍を遂げたセルマー・
サクソフォンに新しい個性が加わった!

対談:宗貞啓二×大城正司

Axos(アクソス)
 ―― 38万円(税抜)という驚きの価格でこの3月に発売されたセルマー・パリ社の「Axos(アクソス)」ですが、設計は基本的にセルマーのトップモデルと変わらないそうですね。
宗貞 省こうと思えば省ける工程をできるだけ減らして、価格を抑えたと聞いています。外見的に一番ちがうのはラッカーの色かな。 あとは、ネックのジョイント部分の譜面立てのネジが無かったり、胴輪なども違う感じがするけれども、それほど大きくは変わらない。
大城 ネックの「S」のロゴが無色だったりもしますけど、他はほとんど変わらないですよね。
宗貞 吹いてみてビックリしたのは、「これ、現行のジュビリーになる前のシリーズUとよく似ている!」と。
大城 僕もそう思いました。今年の1月にフランスに行ったとき、たまたまセルマーで試奏させてもらったんですが、その時は単に「新製品」としてしか聞いてなくて、「なんて吹きやすくて良い音がするんだろう!」と思った。廉価版というイメージは全然無かったですね。
宗貞 僕も何も聞かされずに吹いたんだけど、思わず「これ、いいね!」って。  もっとも、ジュビリーは音質も吹き心地もガッチリとしていて、響きも安定した感じがするのに比べれば、アクソスの吹き心地は軽め。それが吹きやすさにつながっていると思うのね。
大城 軽くて吹きやすいことは確かですね。でも、プロフェッショナルの使用に充分に耐える楽器です。むしろ、細かなコントロールが要求されるコンテンポラリーな曲を吹く時などは、アクソスの方が使いやすいかも知れない。
 ―― 先ほど現行のジュビリーの前のシリーズUの話が出たのでお聞きしておきたいのですが、前のシリーズUとジュビリーのシリーズUではどのように変わったのですか?
宗貞 ラッカーが変わりましたよね。そのせいなのかどうか、音質がものすごくしっかりした感じになった。僕には非常に魅力的な音です。特にソロなんかでね。僕のアルトはまだジュビリーじゃないんだけれど、ネックだけはジュビリーにしています。
大城 ネックだけでもかなり変わりますからね。僕も、ジュビリーになって音の深さと厚みが以前よりも増したと思います。ジュビリーは、セルマーにとって結構大きな方向転換を遂げたモデルなんじゃないでしょうか。
 セルマーも、その昔のマークYとかマークZの頃は厚みのある強い音を持っていたんですが、その後、僕のイメージからすると、華やかで輝かしくパワフルなんだけど、響きは多少ライトな方向に進んだ感じがします。 それがジュビリーになって、音の深みや厚みと言った点ではまた戻って来たのかなと。僕は古い時代からのセルマーを知ってますから「あ、これぞ昔からのセルマーらしい音だ!」と、そんな印象です。
 ―― 復古趣味ではない?
大城 全然ちがいます。むしろ、とても現代的で、革新的とも言えるモデルだと思う。たとえばレガートのつながりだとか上から下までの音色の均一性だとかは、ジュビリーになって格段に良くなった感じがします。
 ―― ドゥラングル氏など誰か開発アドバイザーの影響が大きいのでしょうか?
宗貞 もちろんそれもあるでしょうが、誰か一人の意見というより、世界からいろんな声を吸い上げた結果でしょうね。日本のプレイヤーたちの声ももちろん届いていると思うし。  
 ―― ジュビリーが前にも増してしっかりした吹き心地の楽器になったとしたら、アクソスの個性がセルマーのラインナップではより重要になる? 大城 存在感が際立つことになりますね。ジュビリーが出る前だったら、アクソスは多分、それほど差別化できるモデルにはならなかったかも知れない。
宗貞 いずれにしろアクソスが出て選択肢が拡がったわけだから、これは大いに歓迎したいですよ。
大城 とても楽に吹けて、しかもしっかりとセルマーの音が出ますから、中高生や女性などにはアクソスを好む人が多いかも知れない。「ジュビリーだとちょっと重い」という人たちにはいいでしょうね。
 ―― 今までは、ちょっと重くても「セルマーだから」と使っていた人もいたでしょうね。
宗貞 でもね、アクソスは「軽い」と言っても、一つ前のシリーズUとそれほど変わらないんですよ。
 ―― 税抜38万円というアクソスの価格をどのようにご覧になりますか?
宗貞 セルマーのサクソフォンは、今まで初心者や中高生などに価格的に手が届きにくい面がありましたけど、アクソスなら安心して勧められる。
大城 この価格設定にはそうした狙いがあるのでしょうが、でも結果的には、もう一つ性格の異なる魅力あるモデルが加わったという意義の方が大きいと思います。 僕はジャズプレイヤーなどにも歓迎されるんじゃないかと思うんですけどね。リファレンスが、どちらかと言えばマークY的なのに対し、 もう少しモダンな音の好みを持つ人たちに。
 それと、吹奏楽のサクソフォン・パートで吹く場合なども、もの凄く楽な楽器なんじゃないかと思います。吹奏楽では瞬時に音量や音程をコントロールしないといけない。 とても小さな音、とても大きな音、あるいはクラリネットとぴったり合わせたいとか、そんな室内楽的なコントロールがアクソスはとてもやりやすい。 それこそ、演奏の難しさが半減するかも知れない。
宗貞 たまにフルートと一緒にアンサンブルしたりするけれど、今使っている楽器だと音量を半分くらいまで落とさなくちゃいけなかったりするので、 そんな時にも楽なんじゃないかと思った。
大城 あとは、前にも言いましたけど現代音楽ですね。極限のピアニシモのコントロールやフラジオ、現代奏法などにも楽な楽器だと思います。 レスポンスも速いですから。
ニュー・ヴァルールU
 ―― もう1機種、アクソスよりやや先に、日本限定品ながら「ニュー・ヴァルールU」という個性的なモデルが登場しました。 シリーズUのボディをブラッシュドラッカー仕上げにし、ベルインナーや一部のパーツはゴールドラッカーになっています。 それでいて税抜価格は45万6千円とシリーズUよりも安い。
宗貞 サテン仕上げによって非常にしっかりと落ち着いた音が出ます。抵抗感が強くなるわりに、息もとても良く抜ける。 実は、知り合いのアメリカ人が東京で即買いして帰りました。
大城 そういわれれば、アメリカ系のサクソフォン奏者が好みそうな音かも知れませんね。僕も前に試奏したとき、正直言って欲しくなったんですよ。 ふだん使っているのと全く違う個性があって。
宗貞 ひょっとしたら、ジュビリーのシリーズUよりも抵抗感は強いかも知れない。
大城 そうですね。現行のジュビリーでも軽いと思う人には、この楽器は良い選択肢になるかも知れないですね。
宗貞 前のヴァルールよりも、吹きやすさや音程などが良くなった感じを受ける。 音色的には、前のヴァルールと同じようにマークY的なものを求めたんじゃないかという気がしないでもない。
 ―― 大城さんは「ドビュッシーやグラズノフなどの古典的な作品をこの楽器で演奏してみたい」とおっしゃっていましたね。
大城 グラズノフやドビュッシーなどは、落ち着いた重量感のある、ややダークな雰囲気の音で演奏してみたくなるのですが、 ニュー・ヴァルールUの音色はそうした古典的なサクソフォンの音楽にとても似合っていると思います。 ただし、イベールなどはもう少し明るめの音色で吹きたい気持ちになりますけども。
 それと、オーケストラで吹く場合も、この木管的な落ち着いた音色は非常にマッチすると思いますね。「展覧会の絵」とか「アルルの女」とか。
 ―― ピアニシモを出すのは難しくないですか?
大城 全然難しくありません。むしろ抵抗感が強いので安心して出せます。それだけに、まだパワーが足りない中高生や女性などにはちょっとハードに感じるかも知れない。 見た目は軽そうに見えるんですが。
宗貞 マウスピースやリードの合わせ方によっても響きが変わってくるかな。
大城 そうですね。僕だったらセルマーの170くらいがちょうど良いかも知れない。
宗貞 僕は息圧が強い方だから、昔からちょっと重めの楽器でないと駄目な人間なんだけれども、僕のようなタイプには、これ、圧倒的にいい!
大城 試奏されるのを聴いてても「宗貞先生、絶対今度はこれですよ!」と言いたくなった(笑)。
宗貞 年取ると軽い楽器の方がいいんだけどね(笑)。
大城 それにしても、表面の仕上げの違いは本当に大きいですね。
宗貞 ジュビリーの音質もね、ラッカーがかなり決めているんじゃないかと思えるフシがあります。ブラックラッカーの音のイメージとちょっと似てるんだよね。
大城 あー、確かにそんな感じですね。
 ―― 宗貞さんはテナーは何をお使いなのですか?
宗貞 ジュビリーの前のシリーズVです。当時、ジュビリーがあったら絶対にジュビリーのVを買っていた! テナーももの凄く良いです。 だから、せめてネックだけでもと、ネックはジュビリーにしています。
 ―― 大城さんのソプラノは?
大城 僕もジュビリーの前のシリーズVです。僕も、ジュビリーが出ていたら絶対に買っていましたね。それほどジュビリーのソプラノは良い。 多分、世界最高レベル。音程、音色、コントロールのしやすさなどほとんどパーフェクトです。何も犠牲にせずに吹けます。
宗貞 ジュビリーのテナーもそうなんだよ!
大城 やっぱり、セルマーがここ数年で飛躍的に変化しているのを、我々はいま体験しているのかも知れませんね。 その中で登場したアクソスやニュー・ヴァルールUが注目されるのも当然です。

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